ハンガーのエコデザイン──環境への影響削減の追求──
トランク、ラゲージメーカーとして歴史あるルーツを誇るルイ・ヴィトン。製品の輸送時に使用される素材、メゾン本来の使命である「最も大切で貴重な物を保護する」という役割を果たしています。このコミットメントをさらに強化するため、ルイ・ヴィトンではあらゆる場面でサステナブルなパッケージを使用し、環境負荷の削減に取組んでいます。2019年12月には、ビジュアル・マーチャンダイジング チーム、パーチェシング、レディ・トゥ・ウェア & クオリティコントロール、パッケージングデザイン & デベロップメント、そして環境チームなど、さまざまな部門が集まり、「服を倉庫から店舗へと輸送する際に使うハンガーをいかに環境に配慮したものにできるか」を考える機会を設けました。
「単なるハンガーだから環境に大きな影響を与えないだろうと言い聞かせ、正当化することもできました─―しかし、1つ1つは小さくても、ハンガーが環境に与える影響を無視することはできません」と話すのは、香港でハンガー再設計プロジェクトを指揮したベアトリス。環境チームのマリオンは「輸送にも使われるハンガーを数多く製造すると、主成分であるポリスチレンプラスチックが大量に消費されます。2025年までに使い捨てプラスチックの使用を廃止し、持続可能なパッケージング開発をすることを目標に掲げた時点で、エコなハンガーへとシフトすることは、重要なステップとなりました」と語ります。また、「品質上の問題にも目を向ける必要がありました。ベルベット調のコーティング繊維が明るい色の洋服に付着してしまうこともあったのです」と付け加えます。これらの2つの重要課題によって、プロジェクト関係者は素早くアクションを起こし、プロジェクトの各段階で環境への配慮を優先することへと繋がりました。「私たちの目標は、今後使用されるハンガーが可能な限り環境に優しいものになるよう尽力することでした」とウィメンズ·プレタポルテ オペレーションの指揮を執るロメインは振り返ります。プロジェクトチームは環境負荷削減を追求するために、サプライヤーに対し、リサイクル(再生)素材で、かつリサイクルが可能な原材料を使用することと、問題のあったコーティングをなくすことを条件として求めました。「これらの新たな条件は、長年関係を築いてきたサプライヤーにも考慮してもらう必要がありましたが、目標に近づくには不可欠でした」とメンズ·プレタポルテのマテリアル·バイヤーのポーリンは話します。
プロジェクトの目的が明確になり、4つの提案がライフサイクルアセスメント(Life-Cycle Assessments, LCA)を通し評価されました。プロジェクトが与える環境負荷を審査する最も厳しい手法といわれるLCAでは、ハンガーのすべてのパーツとそのライフステージ(原料調達、製造、輸送、使用、廃棄などの各段階)が評価されただけでなく、温室効果ガスの排出、資源の枯渇、水質汚染など、環境へのさまざまな影響も調査されました。この厳密な調査により、4つの提案から1つが選ばれ、再生プラスチックの使用によりハンガーの環境への負荷を45%削減し、軽量化も実現。ハンガーのプロトタイプがデザインおよび品質管理部門により改良·承認された後、プロトタイプはすぐに生産に入り、2021年1月からは徐々に新しいハンガーに置き換えられています。
「さまざまな分野からステークホルダーが一堂に会しエコデザインという共通の目的を達成するために力を合せた結果、大きなコラボレーションが実現しました」と、ベアトリスはプロジェクトチーム最終会議の数ヶ月後に振り返ります。このような革新的なコラボレーションは未来を輝かせはじめています。常に改善を心掛けることで、チームは、より環境に優しいパッケージの新たな改善を模索しているのです。